ストーリー『天地音(あまちね)が聴こえるーわたしと彼女の交差点ー』

人生のストーリー。私たちは物語を通じてあるがままの自分(BE)へ還る旅をしています。

大阪暮らしは暇だった

2012年春 大阪

大阪は何度も訪れた街だったけど、まさか自分が住むとは想像だにしていませんでした。サラリーマンの夫の転勤に付いてきてはみたものの、もともと縁もゆかりもない地。お茶をする友達もいません。「いってらっしゃい」と夫を送り出したら、私はずっと暇なんです。それまで2年ほどは東京でほそぼそとフリーライターの仕事をやっていたけど、ほぼ片付けてきました。新たにこちらで営業する気もありません。なぜならその頃、私は2年ほどかけて勉強し、資格もとった心理カウンセラーの仕事で起業しようと目論んでいたから。セラピスト専門の起業塾にまで行ったし(実践ができてなかったけど)、投資した分取り戻さなきゃ。やっとやっと、今こそやりたいことができるじゃないの、てな感じの武者震い状態。

もともと私は働きながらひょんなことから副業で占い師の仕事をしていました。通算で6,7年くらいはやったかな。占いは神秘的で面白く、遊びのようにはまってたけど、当時は今ほどスピリチュアルな世界がメジャーでもなかったし、占い師って、なんとなく裏街道の仕事感が否めない。ちょっとばかり、荒んだ感じもします。けっこうお客さんもきていたし、周りの人にも向いてるよと言われていましたから、こういったことをライフワークにするのはいいかもしれない。しかし、もすこしアカデミックな場所にでたいと思ったのです。そして心理学の勉強を始めたわけです。心理カウンセラーだなんて、国家資格もあるくらいアカデミックじゃないですか。(私は認定資格でしたが)

この暇な時間をなんとか活用しようと、自宅の一室にカウンセリングルームらしきものを作り、起業の真似事を始めてみました。ぽつんぽつんとクライアントもきましたが、仕事というにはほど遠い。おっと、占い師は雇われ占い師でしたからね。自分で集客はしなくてよかったのです。でも今度は違います。だんだん苦痛になってきました。しかも、しかもしかも、ある時気づいてしまったんです。

私は心の潜在で(クライアント来ないで、申し込み入らないで)って思ってる。なぜだろうー。きっとビジネスへの本気度が足りない、腹をくくってないからだわ。まあ、焦るまい。くくろうとしてもくくれないんだから仕方がない。そうこうしながらまた時間を持て余す日々が続きました。大阪の夏は暑かった。

ー秋。

ふと働きにでてみようかと思いつきました。そうしてタウンワークで見つけたのが、家から歩いて10分程のところにある人材派遣会社の仕事。

「臨床心理カウンセラーの資格持ってはるんですね」

面接をしてくれたザ・キャリアウーマン風の女性が、履歴書に目をやりながらそう言った後、顔をあげてニッコリ。なんとなくイケそうな気がしました。

私、パートですけど?

予感は的中。晴れてパート社員として仕事が決まりました。月金9時18時。ビッチリです。暇だからいいんです。人材コーディネーターという仕事らしいから、学んできたカウンセリングも活かせます。ザ・キャリアウーマンは直属のマネージャーでした。とってもサバサバしたいい人。同期で入社した人がひとりいました。彼女と一緒に1ヶ月間は研修だそうで、プログラムが組まれています。なにやらびっちり中味の濃いものように見えるような…。いや、私、時給980円のパートだからね、たいしたことないでしょ。

会社は総勢20名くらい。驚くことに私以外はみな大阪出身。地方から来たという人はいません。うそやーん。東京だとほぼ地方出身者で占めるのにさすがの地元愛深し。みな離れないんですね。というわけで、社内はすべて関西弁の応酬。朝礼では誰かがボケて、社長、部長が、なんでやねんと軽く突っ込むという、ワザまで見せられます。ひやぁ。東京にいたとはいえ、私は九州出身なので西の方言にはつられやすい。そのうち言葉のイントネーションがメチャクチャになり、あんたどこの人?と聞かれる不思議なしゃべりになることもしばしばでした。オーマイガー。

さて、この会社でのコーディネーターという仕事、研修の時に臭ったとおりマジに社員並みでした。というか、この会社、経理や事務の人まで全てそう。社員もパートも仕事に差はなし。朝礼も会議も掃除もみなでやります。まあ、やりがいある仕事任せられるとモチベーションあがるということもありますよ。

人材コーディネイトをするためには覚えることがたくさんあります。考えてみたら、仕事を紹介するってことは、業務内容や派遣先企業情報はもちろんのこと、通勤経路や場所についての説明も必須です。土地勘のない私は電話応対ひとつとっても地図とにらめっこ。各地域の担当者につなぐまで四苦八苦です。募集のための広告掲載原稿も作ります。さらに面談の仕事です。最初は社員に同席し登録面談のススメかたやり方を覚えていきました。

「っていうか、私、パートですけど?…な、なんでやねん!」

暇すぎて手にとったタウンワークのお仕事。これが後に大きくうねり、彼女との出会いを引き寄せるなんて、まだまだこの時の私は知る由もありませんでした。

つづく